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本日紹介いたしますのはこちら、「憂国のラスプーチン」第1巻です。 小学館さんのビッグコミックスより刊行、ビッグコミックにて連載されています。 作者は原作が佐藤優先生、脚本が長崎尚志先生、漫画が伊藤潤二先生。 佐藤先生は外交官として活動された方で、現在は主に文筆業などをされていらっしゃいます。 長崎先生は様々な雑誌で編集者として活躍された後、いろいろあって浦沢直樹先生作品などに協力をしたり、その他様々な名義で漫画原作をされている方。 そして伊藤先生は押しも押されぬホラー漫画家で、「伊藤潤二」のテーマで著作の紹介をまとめさせていただいております。 さて、本作は佐藤先生のをもとにして描かれた作品です。 それゆえ実在の人物や政治家をもとにしたキャラクターが登場していて、その描写にはいろいろと思うところある方も多いかもしれません。 ですがそこはそれ、漫画として楽しんで読めるしっかりとした内容になっているのです! 2002年5月。 ざわつく外の様子を見た憂木は、コーヒーを入れている手の古江を押さえられませんでした。 いよいよ今日なのかと呟いていると、電話が鳴り響きます。 出てみれば、相手は都築と言う政治家。 彼こそが勇気が敬愛し、同時に今こうして逮捕寸前の状況に追い込まれる原因を作った人物。 憂木が暴走して行ったという背任の容疑で逮捕される……その日が今日だとまことしやかに噂されている状況で…… どうして一介の主任分析官だった自分が国を揺るがす大悪人に仕立て上げられてしまったのか。 悔しさのあまり荒れる彼の元に、やはりやってきた検察。 彼らは「国際学会に出るための費用を、協定に違反することを承知しながら引き出し、3300万円の被害を与えた」と言う被疑事実を読み上げました。 すると入れ替わりで強面の男が現れ、書類にサインとはんこを押すように指示。 ですが机からはんこを取り出そうとするといきなり怒鳴りつけられ、もう逮捕されているんだからそんな身分じゃない、拇印をおせと朱肉を叩きつけられました。 釈然としないながらも拇印を押すと、次は弁解録取書なるものに今思っていることを書けと命令されます。 思わず僕は無実だと口に出すものの、訪問者達は表情一つ変えずではそう書けと返すばかり。 ぶちまけた思いが暖簾に腕押ししたように手ごたえを得られなかった憂木はやむなくそのまま書類を書くと、今度こそ手錠をかけられて留置所に向かうことになったのでした。 検事に多くの質問を投げかけられ、続いて主だった荷物を預けさせられる憂木。 すると今度は「1095」と言う呼称番号をあてがわれ、これからは番号で呼ばれるからすぐ覚えるようにと言いつけられました。 そして次に行ったのは検査です。 採血などの健康診断の後、何か隠し持っていないかと おしりの穴まで調べられることに。 ですが憂木はグッと歯を食いしばって耐えるのです。 たった一人で、これからこの検察と戦い続けるために……! その後、憂木は「調べ」を受けることになります。通された部屋の中にいたのは逮捕されたときに来ていた眼鏡の男の高村と、同じく拇印を押させた強面の男。 どうやらこれからいわゆる取り調べが行われるようです。 部屋に入った早々、憂木は違法なことなどまったくしていないと待ち構えていた2人に主張するのですが、今日は遅いから簡単な経歴だけ聞く、とはぐらかされてしまうのでした。 そして憂木の大学院での専攻や、両親職業、最近の生活、持病の有無や趣味でスポーツをしているかなど世間話のようなことばかり聞いてくる高村。 最初はその意図がつかめませんでしたが、ゴルフはやらないのかと言う質問などから金の流れを探っていることに気が付きます。 潔白であるならそんな質問をされても埃すら出ないのでしょうが、このまま相手のペースに流され続けていては飲まれてしまうことは必至。 そこで憂木は流れを変えるため、後ろの鏡を指差して「マジックミラーになっていて誰かが監視しているのか」と逆質問を投げかけたのです! 図星なのか、ほんのわずかに表情を変える高村。 まさか、と答えるものの、やはり流れは変わった様子。 長い付き合いになるのでこの辺で切り上げようということになりました。 終了の証に自分は拇印、高村は象牙の印鑑。 憂木は、こうして身の回りのことからも力関係を見せ付けようとしているのかと考えていると、高村もまた憂木の考えを見透かしているようで質問をしてきました。 もしかして勤めてきた情報分析官で培ったテクニックで戦おうとしていないか、と。 押し黙る勇気に対し、高村は更にこう続けるのです。 勝てるわけがない。これは「国策捜査」なんだから、と! その言葉をきっかけに、2人の長い長い戦いは幕を開けたのです……! と言うわけで、手に汗握る憂木と高村の戦いを描く本作。 もう一本の柱として、以前憂木が勤めていた外交官の仕事風景も描かれます。 そちらでは都築の強引なところもあるものの国のために身を粉にして奮闘する姿や、憂木の外交官としての活躍が描写されており、成功を収める回想パートと辛い取調べを受ける現代パートが対照的に紡がれます。 それも単に2パートを混ぜて書いているわけではありません。 外交官の仕事はスパイのようなものだといわれた過去を思い出し、その当時の心情に立ち返って検察との戦いに挑むシーンや、高村に憂木の「ラスプーチン」などと言う売国奴を思わせるあだ名を馬鹿にされたあとに始まる回想で、そのあだ名は都築が命名したものであり、憂木がラスプーチンの世界情勢を見切って預言めいた超能力を発揮したことに由来していることが明かされるなど、現代パートと回想パートが密接に関係している場面が多く見られるのです。 原作つきで、更に原作者の実体験に基づいているということもあり伊藤先生には切っても切れないホラー要素、オカルト要素は一切皆無。 ですが高村の不気味な自身や、不安をあおる薄気味悪さと言う面で伊藤先生の持ち味が発揮されています。 比較的大人しい描写で書かれている本作ですが、伊藤先生らしい表現もバッチリと駆使。 憂木がなんでも思い通りの供述をする「自動販売機」にされてしまう、と言うイメージは ホラーでギャグ風味もはらむ伊藤先生ならではの筆致で描かれているのです! 伊藤先生初の原作つきでオカルト要素皆無なドキュメント調作品、「憂国のラスプーチン」第1巻は全国書店にて発売中です! 題材などからいろいろ手を出しにくくなってしまっているきらいのある本作。 確かに伊藤先生なのにホラーやギャグじゃないですし、いろいろ意見がぶつかりやすい実際の事件を基にした作品で、更に政治やなんかの暗部を描くやや高年齢向けの内容と、食指を伸ばしづらい作品かもしれません。 ですが様々な背景はおいておいて、いやらしくアレコレ手を尽くしてくる検察に、正義は我にありと確信する主人公が立ち向かう話として考えれば、素直に読み応えのある骨太な作品になっています。 政治モノはなぁと言う方も、心理バトル(?)モノとしてお手にとって見てはいかがでしょうか。 さぁ、本屋さんに急ぎましょう!! |
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